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- インドネシアの少年ミカエルは、生まれつき心臓が体外に飛び出した「心転移症」を持っていた。
- 彼は2年しか生きられないと告げられたが、両親の介護のおかげで7歳まで成長した。
- しかし、彼の胸には大人の拳ほどの心臓がぶら下がっており、鼓動が見える状態だった。
- 韓国のセブランス病院は、海外の患者を招待して治療を行うプログラムを実施しており、ミカエルもこのプログラムを通じて手術を受けた。
- 手術は成功し、ミカエルの心臓は体内に収められた。
- セブランス病院はこれまで29カ国226人の患者を招待治療しており、外部の支援団体の後援も受けている。
心臓が飛び出たまま成長した少年ミカエル、手術経て初めて胸の中で鼓動始めた
<大人のこぶし大の心臓が胸の上にぶら下がったまま鼓動して……> 生まれつき胸骨がないなどの理由で、心臓が体外に飛び出した状態で生まれる「心転移症(Ectopia cordis)」。新生児の12万5000人に1人の割合で発症し、そのうち9割が死産あるいは生後3日以内に死亡するという希少疾患だ。 インドネシアの少年ミカエルもそんな厳しい運命を背負った数少ない子供の一人だった。現地の医師からは2年しか生きられないと告げられたものの、両親の介護のおかげもあって奇跡的に7歳まで成長した。しかし彼の胸には大人の拳ほどの心臓がぶら下がっており、鼓動する様子がそのまま見える状態だ。母親は「心臓発作が起こるのではないかといつも心配していました。この子は普段から息がとても苦しい様子で……」と語り、もはや猶予の時間がないのは誰の目にも明らかだった。 この状況を現地の教会を通じて伝え聞いた韓国セブランス病院の医療スタッフは、招聘治療プログラムの対象としてミカエルを呼び寄せ、無事に彼の心臓を体内に収める手術に成功した。KBSなど韓国メディアが報じた。 海外の患者を招待して治療を行う セブランス病院は、韓国ソウルの新村(シンチョン)にある延世大学医科大学の付属病院。朝鮮王朝では初の西欧型医療人材養成機関として1885年に設立された廣惠院を前身とする医療機関で、セブランスという名称は財政難だった1899年に米国の事業家ルイ・ヘンリー・セブランスから莫大な寄付を受けたことに由来するという。また、初期には運営に米国から来た宣教師たちが携わっていたこともあり、1935年までは病院長は米国から来た宣教師らが務めていた。 こうした設立当初からの経緯もあり、セブランス病院では2011年から経済的な問題や医療水準の問題で満足な治療を受けられない海外の患者を韓国に招待して治療を行う「グローバルセブランス、グローバルチャリティー」というプログラムを実施。これまで病院内外から計88億ウォン(約9億5000万円)相当の義援金を受けて、ハイチ、ケニアなど29カ国226人の患者を招待治療してきた。 今回、「心転移症」に苦しんでいるインドネシアの少年ミカエルへの手術や入院治療もこのプログラムを通じて行われ、外部の支援団体であるグローバル愛の分かち合い、韓国心臓財団、韓国基督公報などの後援もあったという。 >>【動画】心臓が飛び出た少年ミカエル ===== 「心転移症」の手術を受けたミカエルと母親、手術を担当した医療スタッフ(写真提供・セブランス病院) 予想以上に心臓が飛び出して深刻な状態…… しかし、実際に韓国にやってきたミカエルを検査すると、さまざまな問題が出てきた。 一番の問題は体の外に出ている心臓が大きいことだった。シン·ユリム心臓血管外科教授は「予想していたよりも心臓が飛び出してお腹の方に大きく垂れ下がっている状態でした。これが深刻でした」と語った。 また、心臓カテーテル検査や脳のMRIなどを行ったところ、2つあるはずの心室がひとつしかない機能性単心室であることが判明。さらに肺に血流を送る肺動脈がなく、4つあるはずの心臓弁膜もひとつしかないので血液が逆流していた。全身と肺を循環した血液がひとつの心室へと流入し、心臓に負担がかかっている状態だった。また、両方の血液が心臓内で混ざって慢性低酸素症まで発生し、心臓はもちろん、脳やほかの臓器の機能低下まで憂慮される状況だった。 人工横隔膜で心臓のスペースを確保 手術を執刀したハン・ソクジュ、シン・ユリム両教授はまず心臓を体内に入れるためのスペースを確保する方法を探った。これまで体内になかった心臓を無理に入れようとすると肺や心臓が押しやられて負担がかかるからだ。 そのため、お腹の他中の臓器を横に押し出し、人工材料で横隔膜を使って空間を作り、心臓を挿入した。さらに、単心室内で血液が混ざらないようにするため心房中隔の手術、弁膜逆流を防ぐ弁膜成形手術も同時進行で行ったという。 全ての手術を終えてからは手術部位を人工材料だけで覆って経過を見守った。すぐに縫合してしまえば、腫れていた心臓が体内に入れたことで圧力が加わり無理がかかるかもしれないからだ。幸いにも、ミカエルは2日後には心臓の腫れもひけて縫合まで完了することができた。 これまで家の外に出ることもできなかったミカエルだったが、今は普通の子供と一緒に外で遊ぶことも可能になった。今回、ミカエルの手術が成功したことは、希少疾患患者に希望の光をもたらすものとして話題になっている。 >>【動画】心臓が飛び出た少年ミカエル
ソース:https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2023/08/post-102451.php
彼の胸には大人の拳ほどの心臓が飛び出しており、その状態が鼓動する様子まで見えるという驚くべき状況でした。しかし、韓国のセブランス病院の医療スタッフが彼を招待し、手術を成功させることができました。この病院は、海外の患者を招待して治療を行うプログラムを実施しており、これまで多くの患者を救ってきました。