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- 中国の習近平国家主席はインドで開催されるG20サミットに出席せず、代わりに李強首相が参加すると報道されている。
- 中印関係が悪化し、中国がインド領と主張する地域を含んだ地図を公表したことにより、インド政府は抗議を行った。
- インドはG20サミットをグローバルサウスのリーダー国としての地位を固める重要な機会と考えており、中国の欠席は中印の主導権争いの一環とも見られている。
- 習近平の欠席は中国が今後力を入れたい多国間枠組みを示すものであり、BRICSとASEANが注目されている。
習近平主席、G20「欠席」は嫌がらせ? 欧米の批判から逃げた? 中国のメッセージを読み解く
<多国間の首脳外交を強調し、BRICSサミットには出席した習近平が、プーチン露大統領とともにG20サミットを欠席するのはなぜか> 「プーチンと習、G20サミットを欠席へ」──あるインドの人気タブロイド紙にこんな見出しが躍った。 だが、見出しの下の本文のはそこまで断定的ではない。「報道によれば、中国の習近平(シー・チンピン)国家主席はインドで開催される20カ国・地域首脳会議(G20サミット)に出席しないとの見方が有力だ」 やや拙速気味のこの見出しは、インドの首都ニューデリーで9月9日に始まるG20サミットへの現地メディアの熱の入れようと、出欠を明言しない習に対する国内外の関心の高さを示している。この習の沈黙は世界の2大人口大国同士の関係について、一定の見方を提供するものでもある。 欧米メディアが引用した複数の情報筋によると、習は出席しない意向だ。ある匿名のEU外交筋は、代わりに李強(リー・チアン)首相が参加すると語った。 ただでさえ微妙な中印関係は8月末、中国が新しい地図を公表したことでさらに悪化した。この地図は両国が帰属をめぐって対立しているアルナチャルプラデシュ州や、中国の実効支配下にあるがインドも領有権を主張しているアクサイシン地域など、近隣諸国との係争地を中国領として表記している。 インド政府はこれに「強い抗議」を行った。観測筋からは、G20サミット直前の意図的な嫌がらせという見方も出ている(中国はインド側の批判に取り合わず、「冷静さを保つ」よう呼びかけた)。 グローバルサウスのリーダーの地位を争う 今回のG20サミットで議長国を務めるインドは、この機会をグローバルサウスのリーダー国としての地位を固めるための新たな一歩とみている。 習が2013年に中国の指導者になって以来、対面で開催されたG20に出席しなかったのは新型コロナウイルスの蔓延が続いていた21年だけだ。地元のヒンドゥー紙は、こう指摘した。 「インド行きを見送るという決定の意味は大きい。1週間前には、南アフリカで開催されたBRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)サミットに合わせてモディ首相と会談しているのだから」 習の欠席騒動には、中印両国によるグローバルサウスの主導権争いという側面もありそうだ。中国側はモディの「縄張り」で世界の指導者たちと会うためにニューデリーを訪問する姿をインド側のPR戦術に利用されたくないと考えた可能性もある。 習は欧米にメッセージを送っている可能性もある。中国が今後、力を入れていきたい多国間の枠組みはBRICSとASEAN(東南アジア諸国連合)なのかもしれない。 ===== 『反中連合』から冷遇されることを懸念? 台湾アジア交流基金のサナ・ハシュミは本誌にこう語った。「G20サミット出席取りやめは、おそらく習が『反中連合』と見なす国々から冷遇されることを懸念してのことだろう。例の地図に対するインドや東南アジア諸国からの反発の影響もある」 「これは中国の言行不一致を際立たせる行動だ」と、ハシュミは話を続ける。「多国間の首脳外交、特にグローバルサウスの連携を強調していながら、G20サミットに出席しない。習はG20を多国間の公平な枠組みと見ていないのかもしれない」 中国外務省は9月1日、李強首相がインドネシアを公式訪問し、9月5~8日にジャカルタで開催されるASEAN関連の首脳会議に出席すると発表した。 もちろん、9月9日までにニューデリー入りすることも可能だ。
ソース:https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2023/09/post-102584.php
習近平氏の欠席には、中印関係の緊張やグローバルサウスの主導権争いといった要素が関わっているようです。記事は冷静かつ客観的に情報を伝えており、読みやすい文章でまとめられています。特に、習近平氏の欠席が中国の外交戦略やメッセージにどのような意味を持つのかについて考察している点が興味深いです。